フェイスブック 若き天才の野望 / デビッド・カークパトリック

0 comments

Posted on 13th 3月 2011 by emergent in 読書

, ,

電子書籍はそのボリューム感に気づきにくいというけれど、本書はまさにその典型。圧倒的なボリューム感と内容の濃密さ。著者の広く深い調査結果が余すところなく展開されていることもそうですが、マーク・ザッカーバーグという人がたった数年でここまで様々なことを経験したのかと、ただただ関心してしまうばかりです。

ハーバード大学の学生だった彼は当初Facebookを複数ある一つのプロジェクトとして開発し、ハーバード関係者専用のサービスとして運営していました。当初から、実名でのソーシャルネットワークというところに主眼を置いたこのサービスは、少しずつ対象範囲を広げるたびに周囲を席巻していきました。ご存知のとおり、現在では世界の多くの地域で最大のシェアを誇るSNSになっています。

ザッカーバーグのすごいところは、サービス拡大におけるバランス感です。いたずらに規模の拡大を追い求めず、広告表示を最小限にしユーザーの利便性を最優先する。金銭面で苦しい時期もあったようですが、Facebookの潜在能力を信じて疑わないザッカーバーグ本人とその支援者によって、少しずつ、しかし爆発的に(矛盾がある表現ですが)サービスを広めていきます。

ユーザー数が増えると、少しの機能変更に対し「前のほうがよかった」と反対するユーザーも出てきます。日本人ならmixiでも同様のことを記憶している方もいると思います。今ではFacebookの中核をなす機能であるNews Feedもそのひとつ。そういうユーザーによる反対の経験のたびに、Facebookはユーザーと対話し、理解されていきます。

特に印象的だったのは、ザッカーバーグの「Facebookはビジネスというより政府に近い」という考え方です。Facebookはソーシャルな繋がりを提供するサービスであり、そこには個人のユーザーもいればFacebook上でビジネスをする企業もあります。ソーシャルな繋がりをうまく制御するにはプライバシーの問題やアプリケーションプラットフォームの整備、まさに政府的な役割が必要になります。この考え方の芯が通っているからこそ、人が離れないサービスであり続けられているのだと思います。

ここ最近で、Facebookは日本でも徐々に流行り始めているようです。私も使っていますが、徐々に友人も増え、ユーザーインタフェースもシンプルで使いやすいため見る時間が増えてきています。実名前提である、という点でまだまだ問題は山盛りでしょうが、今後日本でも社会的に重要なプラットフォームとして成長していくと思っています。

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
デビッド・カークパトリック
日経BP社
売り上げランキング: 33

コメントはまだありません。

コメントする